帰ってきました。 うちの中では最もシンプルで長く作っていて、改良しながら継続生産しているモデルの一つ。 ここ数日間は、同じ型の黒とナチュラル色の量産製作もしていました。 もちろん、作る毎に少しづつ深化しております。ネガ消しの作り手側からのトライ、つづけています。 しかしながら、今回のメンテは修理箇所もありまして、 数年間のご使用品とはいえ、ご迷惑をお掛けしております。 今回の個体は、そこがステッチ2目分が擦り切れていました。 5年以上は前に製作した麻糸縫製品。 強度の面だけをみますと化繊糸のほうが強いと思いますが、風合いという意味では麻糸も素晴らしい。 stovl で直接御注文いただく場合は、適材適所的所見と風合いと好みから選んで頂いております。 天然素材で最強の麻糸といえども、長期の使用と使い方によっては磨耗が進んでしまいます。 その時がちょうどメンテナンスのタイミングと考えていただくと良いかとおもいます。 写真にあります様に、ここはどうしても負担が掛かり擦れやすい箇所なんです。ですから、ここのような動きのある可動部分にステッチをかけて補強しようとしても糸切れは避けられません。 この課題には十数年考え続けておりますが、完全な解決はむずかしいですねぇ。 まあ、アイデアは幾つかありまして試作でテストは繰り返しておりますが。 結論の一つに、「切れやすい位置には、ステッチを入れない構造」ということがあります。 ステッチが無ければ切れようがありませんから。 しかし、それには可動箇所に最良質な部位の革を使用する事が大前提となります。 そんな事から、うちではシンプルなモデルに関しては、可動部にはステッチの無い型が多いのです。 この辺の話は、すご~く長くなりそうなので、また機会をみて説明できればと思います。 今回は糸切れの補修とメンテナンスで戻ってきましたが、部分補修ではなく全ての糸を白から黒ステッチへの変更の御注文となります。 基本、最良な材を使い修理できる事を前提に設計していますので、大概の修理は可能です。 革に使用感がありますが、全体的に傷みの極端に進んだところもなく、新たにパーツを切り出す必要もなく全て再使用できました。 革にキズをつけないように、一目づつ糸をカットしてほどいていきます。 裏表面ともにクリーニングをしてl組み上げてからでは出来ない箇所はバラの状態でオイル補充。 黒糸で縫い直しています。 最近では、このウォレット、黒ステッチが標準仕様になっています。 内側も画像のとおり、良い状態を保っていますね。 針穴もだれていませんでしたので、割と組み上げもスムーズでした。 ミシンと違い、針穴への負担が少なく、かつ革は強固に縫製されています。 針穴の大きさとピッチ・際からの距離、それぞれ強度とみためのバランスがポイント。 このあたりが製作者やメーカーの考え方・技法によって変わってくるところであり、完成度と堅牢性の違いに直結する勘所と考えています。 これで、また数年間は大丈夫だと思います。 メンテナンスや改造は、新品を作りあげるのとはまた違ったポイントの多い作業です。 愛用頂いた物が見れるだけでも嬉しいのに、製作時に考えていた部分の検証もでき、 ありがたくも大切な時間です。 .
by stovlgs
| 2011-07-18 18:45
| ロングウォレット
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