ストーヴルの作る製品の附属パーツや構成部品についてですが、肩当てやストラップ・スリング類、画像のような開き留めのベルト類は殆どの場合、本体以上に良質な背中心付近もしくは繊維組成の緻密な部分で作られています。 本体であるバッグと同じくらいに大切な存在として考えているともいえます。 「留める・掛ける・引っ張られる」といったチカラや重さを受け持つ重要パートだからです。 バックル付近やピン穴まわりの革に至っては、最も捩じられたり引っ張られる動きを伴う過酷な使用環境にあります。美観の意味で革表面の状態も大切ですが、繊維の緻密さや血筋の走り方・伸びの方向性を鑑みた部位選定が重要になります。 画像の個体はGSリアバッグですが、牛一頭の半身から良質部位だけでバッグを一つ仕上げるやり方(というか良質素材だけで組み上げる作り方をすれば一つしか作れません)で作られた物である為、ベルトパーツにも重きを置いた裁断が可能となります。この個体も背中心部位を使いベルトを仕上げることができました。 これ以外の物もある程度の大きさのバッグを作る場合などには、この方法で配置を見究めてから裁断しますので最も理想的な適材適所をより鑑みた製作が可能となります。 皆さんのイメージされているとおり厚い革は堅牢ではあるのですが、じつは曲げへの耐性については課題もあります。革が厚くなればなるほど屈曲をあたえると表面と裏面とで引っ張りあう力が強くなり外側となる部分は張りに耐えきれなくなります。堅めに鞣された革においては限度を超えるとエッジや弱い箇所に切れ込み状の小さなクラックが入ることがあります。とくに前述したバックルピンのホール付近はその影響を強く受け傷みやすい部分であるといえます。 これらの課題点は、ある程度しかたのない部分ではあるのですが、作るうえで対策し、使われる方の少しのお気遣いによっても、その後の「もち」が変わってまいります。 この問題を起こさないように作り上げるには、屈曲部の革の状態と共に「厚さ・堅さ」とホール形状や大きさ・間隔の関係性を見究め、またバックルのサイズやカタチによる革の屈曲度合のバランスを計算した施工方法が重要になります。 また作りながら革自体の慣らしと部分的なオイル補充によって堅牢性を維持しながら柔軟性のある革にすることも大切な方策となります。 これらの対策については通常量産品では不可能ですし、オーダー製作の工房だとしてもされていないことのほうが殆どだと思います。ようは生産効率といえば聞こえはいいですが、ユーザーさんに解りづらく面倒な手間は価格に転化しづらい部分だということなのでしょう。 革素材は何事も「味」で片付ける傾向があることも事実です。それなのに作り手側から無責任な「一生モノ」口上が多いことも気にかかります。 そういった売り口上に懸命になるよりも、出来る限りの対策をして使用時の注意点をお伝えすれば、長期にわたって良い状態で気持ちよくお使いいただくことが出来ると思うのです。 普通に見えて使われる方には何の違和感もなく使えることが一番大切だと考えています。 Λ.画像ですが、ピンのホールまわりは初期の慣らしを施してあり、 革を鍛え屈曲部の硬度やバックルとのバランスも調整済みです。(シンプルなブラス製ピンバックル) ホールまわりの細かなシワ、これが良質部位の証し。 繊維が緻密で細かくないとこの表情は出せません。 . #
by stovlGS
| 2015-07-14 00:32
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この個体は、コードバンのブラックを全てのパーツに用いたフルコードバン仕様。 形としては、「ロングウォレットのショートタイプ」になります。 最終のコバ磨き工程が完了し、ここからオイルメンテナンスを施し完成となります。 レポート用の為、データサイズを小さくしてメールで送る都合もあり粗めの画です。 ちなみにISO800か1600の手持ち撮影画像です。 この後、資料撮影をして納品となります。 ウマ下手ではない本当の意味でのハンドメイドをとの思いで取り組んでいます。 お急ぎの納品をご希望の場合には承れないこともありますが、 進度等レポートを画像や文章でお知らせしますので、製作工程など御興味のある方は御安心頂けるとおもいます。 Λ.レポートは出来る範囲での対応になりますので、御了承ください。 良いものは絶対お作りします。 お気に召されない製作ほど虚しいことはありません。仕様等ご相談のうえ進めて参ります。 ※全てをお客様のご希望の通りに作れるわけではありません。 意匠・構造共に整合性がありストーヴル製品として逸脱しない範囲で承ります。 よろしくお願い致しまっす。 . #
by stovlGS
| 2015-07-10 17:16
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先日、ここで呼びかけをさせて頂いた、「メール返信エラーになってしまったお客様」とは無事連絡をとることができまして仕様等の打ち合わせも完了しております。
お騒がせしました。 にぎやかしで載せた猫さん画像。 自分では珍しい動物ネタ。なんか気に入ってもいるので再掲載。 ←まだ肌寒い頃でしたが、そこかという場所で猫さんが日向ぼっこ。 結構距離がありましたが、目があったというか私の気配を感づかれました。 . #
by stovlGS
| 2015-06-26 19:04
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レーサーはやはり違います。 ホンダのコレクションホールは大好きで、鈴鹿に出来た頃からのファン。 茂木に移ってからは、日帰り50CCツーリングでも気軽に行けるようになりました。 この画像は昨年の夏に行った時の物。 . #
by stovlGS
| 2015-06-22 13:02
| モーターサイクル
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このお財布のユーザーさん、青が好きなんですね。それで最初に製作依頼を受けたときに革の色と共にステッチ糸も青系でとの御相談も受けていました。 青色系で御用意できる麻糸と化繊糸の質感・堅牢度・発色などの特徴を説明しまして、その時は化繊糸の青をお選び頂きました。 仕様のご相談の時に最後まで悩まれていたので、一つの方策として「もしお気に召さなければ、あとで糸の縫い替えが可能ですよ。」とお伝えしていたんです。 そして一年経ちまして御連絡頂いたというわけです。 納品以来とても気に入っていただいてるようですが、普段からオイルメンテナンスを多めにされていたことで、通常の状態よりもかなり短い時間で色が大きく変化し、 納品時に比べると黒革か?といえるほどの濃い青に育っていました。 それで、革の濃さと発色の良い青糸のコントラストが気になられてきた御様子。 色と同時に麻糸への御興味もとてもあるようで、紺色の麻糸への糸替えの御相談を頂きました。 トップ画像は施工後の物になります。鮮やかなブルーから蝋をタップリ含んだ紺の麻糸に縫い直し、革との統一性も感じられるようになりました。 元のブルー糸もとてもキレイで濃紺の革との相性も良い感じでした。 使用期間がまだ一年ですし大切にお使い頂いていることもあって、コバの状態も積層の接着に関しても状態が良かったので今回は全バラにはせず、ほどいた箇所からを少しづつ麻紺糸に替えるように、ブルーステッチをほどいて、また縫い進みを繰り返す作業でした。 なので画像には二色の糸が写っているわけです。 うちで作る製品は、出来る限り修理が可能となるよう設計と施工で各部対策しています。 まず縫い糸のラインの下は、堀を入れるように革を凹ます加工をしています。こうしますと縫い引き締めた糸が断面で言うと半分ほどが革面に沈み込んだカタチになるので、何かと擦れあっての糸切れを抑止できます。 更に深く専用の道具で堀を切りこむこともできますが、細い線状の切り込みでも革の強度が落ちてしまうので、ストーヴル工房ではどうしても必要なところ以外は凹ます加工で対策しています。 ディテールの薀蓄の意味で堀を深くし過ぎて革と面一にしたとしても財布自体の耐久性をを落としてしまうことになりかねません。糸自体はフレキシブルですし、縫い替えが可能な方策をとっておけばもし糸切れが起こったとしてもメンテナンスのタイミングでお直しできると考えます。 それに太番手の糸の凹凸を手で触れて感じられるのも、手縫い製品の良さだと思うので、少し手で糸の存在が感じられるように縫いの箇所によって糸の沈み込み具合は調整しています。 この糸の存在感という部分が、ミシンや量産品との違いなのかもしれません。一度しっかり作られたハンドメイド品を御知りになるとミシンや量産品の針目や糸の表情が物足りなくなられる方もいらっしゃると思います。 私自身元々ミシン踏みでしたが、糸や針目の質感は物足りなく感じてしまいます。より効率的な生産方法を知っている自分がこのお仕事や製法を続けているのは、この部分が一つのポイントにもなっていると感じています。 また、針穴まわりのことだけでも細かく見ていけばいくつもの勘所が存在するですが、「穴と穴との間隔と穴の大きさ」があります。ピッチが近すぎると頑強な革といえども長い目でみれば切り取り線となり革が裂けてしまう可能性もありますし、逆に広すぎると革と糸との追従性も悪くなるばかりか、みためにも品のない物にもなってしまいます。 穴の大きさは糸の太さや素材、チカラの掛かりかたやピッチの間隔とのバランスによって調整し変えていきます。これらの対策をしておけば自ずと耐久性も上がりますし、もしいつか修理や分解メンテナンスが必要になった時にスムーズな施工が可能となります。 今回はもちろん何事も問題なく糸替えが完了しました。 お客様からも理想通りの物に仕上がったとお言葉をいただきました。ありがたいですねぇ。 今回の加工は希なケースではありますが、あとで異なった色や素材に変えてみたいとお思いの場合も、手縫いといいますかストーヴルの製作方法ですと革を傷めずメンテナンスや修理が可能です。 実際、修理は殆どというかまったくありませんが、 どんなに対策しても壊れるリスクと耐用年数はございます。 革製品を簡単に無責任に「一生物」とはいえないこと 御理解くだされば幸いです。 Λ.今回のお財布は多めにオイルメンテナンスが施されていました。 過剰でなければ、乾燥状態が続くより悪いことではないのですが、油分補充は程ほどにお願いしています。 油分補充による色目の変化の早さからか、多めにしてしまう方がよくいらっしゃいます。 体温や紫外線の影響だけでもエイジングは進みますし、革自体が内包している成分から色づきやツヤが出てくることが多いので、使われることが良いエイジングへの近道です。 この個体は染色用に少し厚めで堅い革をつかい、後染めの影響でより堅めに仕上がっていたことから、お客様の判断で補充されていました。(以前書いた私の染色斑の対策もあると思います) 今回の個体は元の革が堅牢で厚かった分、革自体が油分を多く受け止め製品としては問題なくはありましたが、通常では多すぎる油分補充は型崩れや色目の変化に現れたり、触感的に油っぽい仕上がりになってしまいます。 また艶感がなくなりマットな仕上がりになりますので、御注意ください。 今回は若干マットな状態になってきていたので、当分の間は乾拭きのメンテをお願いしています。 また艶だし効果のあるメンテ剤も御紹介しまして、現在は状態よくお使い頂いているようです。 . #
by stovlGS
| 2015-05-31 04:48
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