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長財布 日々の作業工程 縫製ライン下の処理方法とか

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前回に引き続き、地味めな内部ディテールの画像が続きます。
たまには、作業工程のちょっとしたお話とかも書いてみましょう。

その前に話は前回のエコラン車両の事に少々もどりますが、あの車輛は今年の大会の優勝車両です。本当に美しい車でした。
上のほうで、他所様の部品を地味なんて書いてしまって失礼だとおもいますが、私の稚拙な写真のことですからね。
あのスプロケット、私としてはとても感銘を受けた加工部品だったので、勢い余ってトップ画像に載せてしまいました。
御興味のない方にとっては何てことのない物に感じられるのかもしれません。でも、ああいった一つ一つのことに意味があって美しいってホント素晴らしいと思うのです。以上。

話は戻りまして上の画像ですが、これはコインスペースの内側部分になる縫製になります。
この画像、お客様への途中報告用なので、御指定の糸で二本針をつかって進めております。といった感じでメール添付で製作レポートをお送りしています。

この画像はlogに載せることを想定していませんでしたから、画質的に分かりにくいかもしれません。
先ほども書きましたが、この縫製ラインはコインスペースの内部に入ってしまうところですから、とくに糸切れしないような処理と手当が必要です。

基本的には、この位置に使う縫製糸には摩擦に強い化学繊維製を使います。
麻糸も天然素材の糸としてはかなり強いものですが、使用期間が5年~10年をこえる革製品の場合、その耐用年数につきそえる耐久性を考えなければなりません。その意味では麻糸は少々弱いということが私の答えです。

企業や個人のお客様から、すべてを麻糸使用でとの御注文がある場合には、これらの課題があることもお伝えして決めて頂いています。勿論、御了承いただければ出来る限りの対策を施せば化繊糸でなくても年単位での使用は全然可能です。今までそういった製品も量産してきまして、長く御使用されている方も沢山いらっしゃいます。
でも、化繊糸に比べれば堅牢度に課題があることも事実なのは御理解ください。
御人によっては考えすぎだと仰いますが、作り手としては弱点への対策と提言は義務と考えております。

世間では切れやすい箇所にも麻糸を使用している物は沢山ありますし、当方でも長く多く麻糸を使ってきました。糸の擦り切れ等のトラブルがおきたとしても、外側からアプローチできるところであれば、修理もし易く修理費用の御負担が少なくて済みます。
構造的に内部や込み入った重なりの奥等が補修の必要箇所であれば、ある程度分解しないと患部まで到達できないことがあります。そのような構造にならないように設計することが大切ですが、避けられない部分があることも事実です。
場所にもよりますが、分解するということは無事な部分までほどかなければならないということであり、多少のリスクを伴います。

そうならない為にも良い設計と良い製法が大切だとおもうのです。

上の画像、小さく見えづらいですが(とくにスマホで御覧の方すみません)、縫製ラインに凹んだ堀状の細工をしてあります。
この個体は染料仕上げのコードバンですが、床面(裏面)の毛足の身近なスエード状なので、削り込んだ谷状ではなく、
線状に押印するような感じで凹ます加工をしています。
サドルステッチ・クチュールセリエ技法で縫い引き締めていきますと、糸がキレイにおさまって革表面からの出ている部分がが殆ど無くなることで、摩擦負担を減らすことが出来ます。

勿論、糸の素材選定も大切ですが、物理的に摩擦接触を減らしてあげれば相乗効果で耐用年数は大きく変わってまいります。
そうそう、縫い上がった後にも糸の表面へ蝋を擦り込んでおけば堅牢度はさらに上がります。このように小さな工程一つをとっても気の抜けるところなど何処にもありません。

製品の構成要素の一つである糸についてだけみても、選定方法や糸の鍛え方・仕上げかた・太さの調整・縫製の勘所など、
本当に多岐にわたります。
糸についても、今まで感じたことや気付き等、あらためて記してみたいですね。


コードバン素材が少しだけ入ってきたことで、それに偏った内容を載せることが多くなっていますが、
ヌメ革(サドルレザー)が当方の基本素材であります。
勿論、ヌメの場合も同じような対策を施して作っておりますので、御安心ください。
作り手にとって、値段や希少性による取り組みへの差異はありません。

良質なヌメ革はホント素晴らしいですよ。
私、ずっと使って探し続けてきましたから。
コードバンは美しすぎです・・。
















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by stovlGS | 2017-12-10 17:41 | Comments(0)
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