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coin case  メンテ

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コインケースが戻ってきました。 上の画像はメンテ作業終了後のものです。

あるブランド用に製作しているコインケース。これも定番になって長いですが、これは6~7年くらい前に製作した個体だと思います。
相手先仕様製作品の場合、シリアル管理をしているわけではありませんから、はっきりした製作日まではわかりませんが、その時の革のタンナー毎の特徴とか、私のその時期のクセとか製法から推測できます。

この時期の革は、かなり良かった記憶がありますが、エイジング後も良かった事が確認できました。
ユーザーさんも大切に使用して頂いたらしく状態は良いのですが、一目ほど縫い糸が擦り切れていました。

今回は、その箇所だけの補修依頼でしたが、ほつれていない箇所も全体的に麻糸が痩せていました。
もし一箇所直したとしても、近いうちに他の箇所もほつれが発生する可能性がありました。
革の状態からするとまだまだ数年、今までの使用期間を超えられる位の感じでしたので、全体の糸を全部ばらしてクリーニングも含め作り直す事を提案させてもらいましたところ、「是非、お願いします。」とのありがたい御返答。




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早速、分解していきます。
長年の使用で、硬貨が皮革と反応して付いてしまった黒ずみが気になりますね。

汚れの目立つベルトの見返しなどは、新たな革で作り直していきます。

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革の良質な部分(とくに裏の床面)を使う事で、長期使用における耐久性が変わってまいります。
良質な革の部位は背中心の近くと臀部に集中し、繊維が細かく密に絡み合い強度のあるところ。
表のギン面の見ためだけを重視した製作では、長期使用と補修性に耐えうる物は作れません。

革は床面と断面の質が重要です。

刃の先端をカーブさせ薄刃に仕上げた革包丁を使い、極表面の汚れの部分だけを削ぎ落としてゆきます。
サンドペーパー等のヤスリを使ったやり方では表面が荒れる場合が多く、革の繊維に負担が掛かります。切れる刃物ほどの効果は期待できません。

革包丁の表面に張ったテフロンテープ。
他の刃物では善しとされている黒錆被膜ですが、わたしの使う生成り色の革には黒く移ってしまう原因にもなります。
黒錆被膜が広がらないように砥ぎあげていますし、作業中は常に刃と手は清潔な布巾で拭きあげながらの製作ですが、どうしても防ぎきれない事もあったことから、もう十数年つづけている仕様。
かなり独自の手法ですし、ミタメがアレなので載せたくなかったけどしょうがないですね。恥ずかし。。

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これは、戻ってきた時の画像です。
全体に革も糸もくすんで少し型崩れもしていますが、大切に使ってもらっていた事がうかがえる状態でした。

手入れをしてまで使おうと思っていただける事は、作り手としてホントに嬉しいものです。
ありがとうございました!
by stovlgs | 2011-09-03 13:53 | コインケース | Comments(0)
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