革素材の探求とサンプル製作による試行錯誤を経て、「R100GS用リアバッグ」のオーダー生産が出来る事になりました。 今回の写真の個体は、先行生産プロトとなったオーダー仕様の説明です。 通常生産版とはステッチ色等違う箇所もあります。基本となる部分の多くは、通常生産版と変わりませんので、参考にご覧ください。 stovl版と純正タイプの違いは多岐にわたりますが、特徴的なところは3つあります。 1. サイドに雨よけが付いたボックス型カブセ蓋の純正タイプに対して、 stovl製では、外カブセフラップ2枚・内フラップ2枚からなるデザインに変更。 ラリーや70年代以前のエンデューロマシンでみられたカタチをベースイメージにしながら、 革の配置・構成・製法を変え、より堅牢な構造に変更。 2. 車体との装着と、カブセ蓋の開き留めの両方を兼ねている2本のベルトをリベット固定から、 取り外し式に変更。 より細かな採寸と調整によって、車体側にもバッグ側にも優しいフィッティングを実現。 3. 時間やコスト的な要因で、かつての作り手がやりきれなかったであろう部分を、 耐久性と補修性を考え、stovlの得意とする hand sewn 手縫い製法で製作。 この3点に沿って、ディテールの解説を致します。 長くなりすが、御興味のある方は御一読ください。 カブセのデザインと大きさの違いがお解かりいただけると思います。 両バッグともにGSに装着した場合、写真左方面がバイクの進行方向になります。そして、お気づきでしょうか?ベルトの取り回しの違いを。 これら仕様の違いもふまえまして、説明を進めてまいります。 内フラップが2枚蓋となり雨やホコリの進入を防いでいます。通常、市場にあるサドルバッグも含めた製品群のほとんどは内フラップが付いていても固定がされていません。そうなるとバッグ内に荷物が入っていない場合、カブセの自重により内側に下がりきって内蓋の機能を果たさなくなり、型崩れの原因になります。 そこでバックルとベルトを付けて固定する方法もあるのですが、バックルの重さと大きさによって、これも逆効果になってしまう事例も見ています。 そこで考えた構造はとてもシンプルなものでした。 フラップ同士を重ね合わせる従来の方法にプラスして、各パーツと配置から導き出した幅広のベルトループをフラップ中央に設置する方法です。 この方法ですと、倒れ込もうとするお互いが支えあい、点ではなく面と線で接触していますから、空荷状態でもネジレ剛性が確保でき、型崩れのリスクも減らす事が出来ました。 現状では、ベストの方策ではないかと考えます。 ここだけの話し、バックルやベルトなどで作りこみますと、みため豪華になり説得力のあるディテールになるのですが、ここは地味でも機能を選択しました。 ループをスライドさせる事で、容量の可変が可能になります。 この状態で、外カブセとベルトを閉めますと、それなりのプラス容量が確保で出来、ルックス的にもバランスが取れるよう設計しています。 出先でチョッとだけ荷物が増えた時に、この少しの余裕が助かる時ってありますよね。 と説明しながらですが、あくまでもエマージェンシー機能としてお考えください。 このリアバッグの用途としては、工具やプラグ・スペアパーツ・書類・補充用オイル等、いろいろあると思います。 とくにオススメの使い方のひとつは、レインウエアの収納スペースではないでしょうか。 カバンを持たずに、手ぶらでバイクに乗りたい時ってありますよね。 そんな時いつでもレインウエアが装備されているのは、とても心強いものですよ。 小型のシュラフも収納可能です。 この部分は美しさという点からみても、風を切り裂く方向性とみても、個人的にどうしても慣れることが出来ないポイントでした。 これには生産上の都合と若干の装着のしやすさが、その仕様にさせたと推測します。 修理や研究をしていくうちに、その為に犠牲となったのは美しさだけに留まらず、グラブレールとバッグ自身がお互いを傷付けあう要因になっていると解り、ベルトは取り外し式での製作がベストであると確信を持ちました。 グラブレールのフレームに、ベルトの固定リベットが当たっているというだけではなく、リベット下で重なり合うボディとカブセの付け根部分の革にグラブレールとの押されるチカラが掛かり続け、バッグの変形と破損・グラブレールにキズがつく原因になっていました。 stovl製では各部寸法の見直しと同時に、フラップ取り付け部がグラブレールに接しないよう取り付け位置を上げています。 純正とリプロはつぶされて、内容積が減っている事から、 stovl製では、つぶされるチカラがかからないよう正確な採寸をした上で、容量確保をする為には必然ともいえるサイズ変更として高さを少し上げています。 修理記参照頂ますと、この課題も御理解頂けると思います。 そして、ベルトですが、長さで約一メートル以上の良質な革を2本必要とします。 stovlの場合、背中心付近の最良質な部位から切り出し、それを大人二人で、水に濡らした状態で強く引き合い伸ばしきります。只でさえ狂いの少ない背中心の革ですが、雨に濡れて伸びたり型崩れをする可能性も想定しネガを出しきります。 ゆっくりと時間を掛けた乾燥と油分の補充によって、しなやかで強い素材が完成し、はじめてベルト作りに入ることが可能となります。 効率を優先した量産品では、あまりみられない工程と革の部位選択だと思います。 絶対に伸びや破損が許されない馬具のアブミ等で使われる製法です。 穴あけが想定される箇所には、特に最良な部分が来るように裁断し、重なる部分には漉きを入れ、 断面は全て面取りをし磨き上げます。 ベルトの材を作るところからすれば、これだけで数日を要しますが、製品となった後の長期使用を想定し製作しています。 シッカリとした作りをすれば答えてくれる素材です。エイジング後の風情というか姿が違ってくると信じます。 古いだけの物や表情の荒れているだけの物を味とはいいません。 これでベルトの交換・取り外しも容易なりました。バッグの破損・変形に対する縫製修理やオイルメンテナンスも数段やり易くなり、車体への負担もなくなります。 そして、進行方向後ろ面の斜めにオーバーハングした部分は、100GSの特徴であるキャリアフレームの斜めの跳ね上がりにフィットします。ここは革の硬さや厚み毎の調整に加え、フレームの個体差でフィッティングが変わってくる所ですが、幾つものサンプル製作とパターンメーキングによりベストな角度を算出し製作しています。 その上方部分は、ボディとフラップ取り付け面を大きく重ね合わせ剛性を確保。 黒色と磨きの為、革が同化しているので解りづらいと思います。ちなみにその合わせた革とサイド縫いしろとの縫製箇所やブルーステッチの入るところでは、積層でレザーが1センチ厚を超えます。 両サイド面内側には見返し革を貼り込み縫製、前後のフラップとボディは取り付け位置を深く重ね合わせ見返しも追加して縫製、ボディ全体がモノコック的であり2重~3重の補強構造になっています。 ※ 下の写真は、stovl製の個体ではありません。↓ 外殻の構造面が直角に交わることでスタイリッシュな印象に作れる代わりに、縫製強度の弱いものが多いと感じています。 この写真のように、直角に革の断面同士が突き合わされ、革の面に対して斜めに貫くように縫われています。 私個人の考えですが、この縫製法では革の断面に対して斜めに穴をあけますから、糸を強く引きしめ縫製することじたいに無理がありますし、針目まわりの革も強度的にも厳しい状況に置かれつづけると思うのです。 この縫製法で作られた物の修理相談を受けた経験もありますが、どれも糸は緩み全体の型崩れや針穴の崩壊が出はじめている物が散見されました。 この方法のメリットとしては、縫う箇所に外側から容易にアプローチできるという作り手側の利点もあるのですが。肝心の製品寿命が短くなっては意味がありません。 問題は、穴あけ時の難しさと、手縫いする為には狭いバッグ内側からもアプローチしなければならず、厚手の革とあいまって困難を極めますが、縫いあがりの強度と質感を考えますとstovlのバッグでは欠かす事のできない製法になっています。 通常、このような構造の場合ですと、ブラインドリベット等を使えばカタチを作りやすいですし、外側からアプローチできます。 しかし、リベットだけで形作られた物は、補修に適した製法ではないと考えます。革を傷めずにカシメを外す事はとても難しい作業です。 個人的にはディテールとしてのリベットは好きなのですが、それらの課題を考えますとstovl製品として使用することはとても少ないのが現状です。 私の製作の傾向と好みもありますが、縫い辛くても修理が可能な手縫い製法は、ボクサーツインなどの長期運用の多いモーターサイクルに適した製法ではないでしょうか。 内側の曲がる箇所に漉き掘りをいれてませんから、革全体が馴染むには更に時間は掛かります。 GS用リアバッグの製作に於いて、最適と思われる革の硬さと厚みのバランスは解りました。 しかし、現在でも生産個体ごとに、コンマ1ミリ単位で厚みを変えながらの探究は続いてゆきます。 キャリアフレームに溶接されたガイドループに2本のベルトを通し締め込みます。 確実にバックルで固定していればバッグが落ちる事はありませんが、更なる安定感の為もう一箇所を固定します。 こちらも純正と同じくキャリア下面よりフレームにU字金具を差込み、バッグ内側のアルミ板と挟み込むカタチで固定します。 一工夫してビニールチューブをフレームに被せますと、滑り止め効果とフレームの傷防止にもなります。 取り外す頻度の少ない場合は、ねじ山の低い物に変えて小さめのナットに変更したり、タイラップで固定すれば内側に出っ張る部分も少なくする事が可能です。 カブセフラップとベルトループに青糸を使ってみました。気に入って頂けたようです。 広角で撮っていますから、バッグが実際よりも大きめに見えてます。 stovl標準仕様はオール黒ステッチになります。 更なるフィッティングを追求して寸法を見直し、内側の見返し構造なども改良・追加したたモデルとなります。 生産版はそちらになりますが、今回のモデルと同等のデザインと思って頂いてOKです。 雨対策ですが、レインカバーで対応します。 ユーザー様御自身でも御用意できるよう、対応する製品を選定をしているところです。 現在、使いやすく信頼できお求め安いモデルを幾つかテスト中です。 バッグと一緒に納品することも可能です。 御興味のある方に、直接見て感じて頂けるように、試作品と完成版のサンプルリアバッグの用意がございます。 御予約の上お越し頂ければ、御自分のGSに装着して感じを見る事も可能です。 現物確認・ご相談等の要望があれば出張いたします。 GSリアバッグのお問い合わせ・ご予約、お待ちしております。 ◎ R100GS リアバッグ 価格. JPY¥・・・・・+tax (標準生産版ベース) 仕様・革により変動いたします。 デザイン違いや、他車種用等、スペシャルオーダー品の製作も致します。 価格・仕様等に関してはお問合せください。 (2013年2月・2014年5月・2017年11月追記) Λ. ファラオラリーでのテスト、純正バッグ・リプロ品の修理、フィールドテスト等をしながら、GS用のバッグ作りと研究をしてきました。それらの経験をもとに、R100GS用が完成しました。 最高品質のレザーから、最良の部分だけを厳選し製作しています。 (広告・宣伝で、よく使われる言葉ですが、stovlでは文字通り厳選しています。) それらの事から、牛革の半裁(牛一頭の半身)一枚から一つのバッグしか作る事が出来ません。 元々、無理な原価率のもと時間を費やし製作している製品です。 材料コストだけで、バッグ価格のかなりの割合を占めてしまいます。 革の選定・製作から完成まで、昼夜もなく取り組みましても早くて一週間~掛かる事を鑑みますと、かなり厳しいものがあります。 作り手の姿勢としては間違っていないとしても、生業としても考えたり。 実用品として屋外で使われる御客様の身になって考えればどうだろうかとも。 とはいえ、2vGSの御仕事。 レザーマンとしてGS乗りとして、素材となってくれる牛達にも感謝しつつ懸命に取り組みたいと思っています。 ○ GSバッグへの取りくみについて御興味がございましたら、是非こちらも御覧ください。 ファラオラリーHPN用バッグ BMW純正バッグ修理 stovl製GSバッグ・製作と革の検証 お問い合わせ・製作のご依頼・ご予約は、カテゴリーの「お問い合わせ」から。 どうぞ、ご気軽に。 .
by stovlgs
| 2012-09-14 10:53
| R100GS専用リアバッグ
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Comments(4)
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at 2012-09-16 23:38
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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stovlgs at 2012-09-17 15:00
にらたまさん
GS用もですか!ありがとうございます。 赤ステッチは、パリダカの赤とおそろいという事ですかね。 /6用も、どんなのができるか楽しみです。 kaiさ~ん。
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TL1000R
at 2012-09-26 16:41
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stovlGS at 2012-09-28 01:27
TL1000R さん
ありがとうございます。 作りの面では、さらに完成度は高めたいと思っています。 価格は、とてもむずかしい課題ですね。 じつは先日、BMW BIKESvol.60に,取り上げて頂きました。 これからは、多くの皆様に知っていただけるよう、がんばります。
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