ontario knife sheath separation type order

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前々回からお伝えしているのに、なかなか製作内容を説明できなかったシースのオーダー製作についてです。
少し長くなるかもしれませんが、まずはこの製品個体の解説をしまして、あとのほうででシース製作を御注文になるときの価格の目安になる基準のようなものを表せればと思います。

上の画像が今回の特徴的な部分でもあるグリップまわりです。
後々解説致しますが、ここを見れば表題の意味もお解かりいただけるでしょう



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まずは、今回製作するシースにおさまるナイフの紹介です。一緒に写っているのが付属する純正シースです。
このシースもナイフと共にサバイバルナイフの代表的スタイルなので、似たような物も含め見たことのある方も多いと思います。

合衆国のエアフォースパイロットが携行している重要な装備品の一つで、このオンタリオ社やカミラス社がほぼ同じカタチの物を納入しています。
海兵隊やアーミーの使用するKA-barナイフ・西部時代のボウイナイフなどともに、世界中のサバイバルナイフの源流となったものです。
本物・コピー品・有名ビルダーによるハイクオリティなリメイク等々沢山のこのタイプが存在します。
サバイバルスタイルのナイフの背にあるノコギリ状の刃ですが、このオンタリオナイフにはギザギザになっているだけで刃は付いていません。実はこれ元々航空機のアクリルキャノピーを破壊する為のものなんです。
用途が特化しすぎでヒコーキ乗り以外使う機会がない~。なのでこのオリジナル以外のサバイバルスタイルナイフは木や枝が切れるようにノコギリ刃にしてあるんですね。納得。

このナイフの附属シースは簡素なつくりではありますが、まさに機能に特化した素晴らしいものです。
サバイバルナイフ然としたところや革の品質をみてしまいますと合理的な量産品といった風情。私などはそのプロダクト的な部分に魅力を感じておりますが、シースをカスタムメイドすることでナイフと相乗効果でどうなるか個人的にも興味のある製作でした。

今回の御注文のポイントとしては、ブレードだけカバーするシンプルなシースをとの御希望で、あとはお任せといった御注文。
そこで、幾つかの案を出し合いましてご相談を重ね、最終的なカタチを探っていきました。

今回、完成に至るまでに検証したサンプルを幾つか御覧いただきながら解説を進めていきます。
基本的にstovlではフルオーダーの物に関しては最低一つ以上のサンプル品をつくり、各部のバランスと使い勝手を検証します。
これはセミオーダーの時や小さな仕様変更のときにもサンプル品もしくは部分的なディテールのサンプル縫いをして検証・確認をしています。

世間では「オーダー品や一品物」がもてはやされる傾向にありますが、それらの多くが初めて作られるがゆえに性能や耐久性の部分で問題ないかの確証を得られていない部分もあり、完成度の意味からすると未完成の製品であることも認識して頂ければと思います。
1mm寸法が変わっただけでもバランスは崩れます。どんな人でも2~3mmの違いを雰囲気で感じ取るものなのです。小さな製品ならなおのこと。
stovlではそんな「オーダー品や一品物」でも完成度を上げ御期待に答えられる為にも、このサンプル製作と確認作業はなくてはならない工程になっています。
しかしながら、サンプル製作の手間やコストが価格になるべく影響しないよう努めています。
普通の工房ではパターン(型紙)修正だけで済ますところが殆どだと思いますが、これは自分の為の作業でもあります。一品物といえど完成度は必要と考えています。
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sample.1

今回はシンプルかつ御任せの部分が多いことから、二つのデザインとブレードの抜け止め固定の方法を提案させて頂きました。
通常のシースナイフよりも、ブレードの位置がグリップとともに中心寄りになっている事と、背にギザギザがある都合で、背の部分をシースの内側にあてがいながら滑り入れることがしづらい形です。そんなこともあり左右対称デザインのシースも検証してみました。
純正シースにおいては、ナイフの背を内部にあてがえない部分の解消に、リベットで薄い革を挟みカシメて形作られており、ブレードはシース内部の革の荒れたモシャモシャとの摩擦に挟まれて良い感じにおさまり固定されています。この部分はかなりファジーというか有耶無耶でもホールド出来ているところに純正の量産品としてのすごさも感じた部分です。
sample.1では中のスペーサーの数値と硬度と形を調整工夫するという正反対のアプローチで収まり具合を解決しています。

後もう一つ懸案は、ブレードの抜け止め固定の方法。
好みの問題ですが、私はあまりスナップやドットなどの固定金具を信用していません。革が傷む前に破損したり緩んでしまうことを多く見てきたからです。
しかし今回の御注文はシンプルにとの御要望でしたので、考えうる対策を施してみました。
サンプル品2つにスナップとギボシの二通りの取り外し式を試しています。金具が緩んだり壊れやすいのならば補修時シース本体の負担にならないように交換しやすい方法にすればよいと考えての事です。
殆どのシースが、ブレード上のシース本体の革にカシメられたドット金具のメス側に向けて、雄側ドット金具の付いたベルトがシース背面からヒルトを斜めにまたぐように固定する方法が一般的です。
しかしこの方法ですと、ドット自体の交換補修をする為にはシース自体を分解しなければ新たなドットをカシメなおすことができません。ベルトが傷んだ場合でも同じことです。
それともう一つの問題点としては、カシメられたドット金具のシース内真下のブレードに直接接触している物がほとんどだという事。それと稀に接しないような気遣いのある構造になっていたとしても、常にドットに押されるチカラがブレードに加わり続けています。傷がつく意外にも良い影響は何にもないと思います。
それらの問題を解決するためにstovl留め(シース2in1の以前の記事参照)なる方式を考案していますが、今回はシンプルにグリップまわりにベルトを巻きつける形の固定方式を採用しています。
この方法ですとブレードへのやさしさと補修性についての利点はありますが、よくある方式のように斜めにブレードを固定する方法のようなファジーなつくりは許されません。
まさにフルオーダー向けの固定方法だと思います。
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Sample.2

こちらはブラックレザーをつかい、形としてはベーシックにブレードの形に沿うようなシルエットにしつつ、内側には前述したギザギザの部分の影響による収まりが落ち着くように挟み込むスペーサーの位置や形を工夫し場所によって厚さと硬度をかえるようにして諸問題を解消しました。

そして、sample.2ではグリップに巻く固定ベルトをギボシ式で作ってみました。
こちらのほうはギボシの頭の形と大きさに対して、革ベルトにあける穴の形・大きさがバランスしていないと開閉も困難になり穴周りの革が傷みやすいことが問題となります。
しかし、一つづつ細かく穴の位置と形と大きさを調整して作りますと、誠に使いやすく節度感のあるフィーリングも得られる開閉金具となります。
よく見ませんか?ショップの展示品でギボシの穴周りの革がボロボロシワシワの個体。
ちゃんと作れば、すぐにそんな事にはなりません。

「sample.1と2 」ともにいえるのですが、試作仮縫い用のサンプルは出荷することを前提にしていませんので、シルエットは修正代を残した緩めの形です。手縫いステッチも同じフリーハンドですが、ピッチやコバ端からの距離など製品版より荒めに組み上げています。その辺も御理解いただいて御覧くださいね。

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追加改修前の納品用ライト仕様の完成画像です。

二つのサンプル試作を各部説明付きで御覧頂きまして、完成度と使い勝手の確認を致しました。
依頼主様の御希望から、sample.2をベースにしまして、新たに各部見直し本番製作用の上質な革を使った仕様が決定しました。
色はナチュラル。懸案の固定ベルトは、ドットではなくギボシ方式に。
ハンターさんでもある依頼人様、猟場で堅いドットを開けるときの所作や開閉時の音に獲物が反応してしまう可能性もあるとのことから、ギボシ式を御希望になられました。
こんな自分では思いもしなかった理由も勉強になりますし、そこまで気付きのなかった自分がチョッとくやしいですが納得です。細かく調整したギボシは堅すぎスルリと音もなく開閉すことが可能です。
もちろん作るときには長年の使用後に緩くなることも想定した調整を施しております。

ここで御注文の主旨を少し解説。
他にも幾つものナイフをお持ちの方です。
身近な野外活動において仰々しくなく使えるように腰から吊り下げるのではなくて、使わないときはバッグに仕舞われるので大きなシースは必要なくブレードだけカバーした形を御希望でした。
でもチョッとした時に手があいて腰にもつけられるよう簡単なDカン金具を付けておいて下さいとのことでした。そしてそのDカン金具とブレードの固定ベルトのディテールを供用するべくデザインしたのですが、やはり重心の部分に問題があり、鉄芯入りのレザーワッシャーグリップは少し薄めのスチールブレードより重いわけで、チョッと吊り下げるにしてもナイフの位置がバランスせず安定しないのです。
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そこで、其のまま納品することもできましたが、いろいろ検討して仰々しくならないように大きさと重さも負担にならず、見た目にも違和感ないような方法を提案させてもらい了承頂きました。
それが上の画像です。シンプルな構成ながら計算し厚い革と金属部品を組み合わせた集合体。
何より安全に固定され使用できるように、全体のテイストとバランスがくずれて後付け感が出ないよう考えました。
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パカっと開きます。そしてシース裏側のDカンと接続してドットを閉じますと、シース本体・ナイフと共に一体となり腰からも下げられるフルサイズのシースにすることも可能となりました。

画像では伝わらない部分ですが、接続構造のセパレートタイプですが、持った質感にグラつきやガタは殆どありません。フィッティングが完璧に近くなるよう各部ベルト長も調整し作ってあります。
なので全く同じ品番の物でも個体差があるので、お預かりして合わせないとフルオーダーの装着感は得られないことを御理解ください。

もちろん腰からさげても安定していますし、大きさも重さも殆ど変わりません。
お使いの現場によってライトサイズでもフルサイズにでも使い分けが出来ます。
出先でベルト通し側のパーツを外した時はお持ちのバッグやパンツのベルトループなどに接続し吊るしておけば紛失することもありません。
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裏側からみるとわかると思いますが、ブレード・ヒルト・樽型グリップの各部の段差を革の厚みと積層によって解消するように配置して、革の柔軟性だけに頼ったファジーな構成要素はなるべく排除して製作しました。
また、ブレード留めとグリップまわりの構造はベルトがループに通すような構成なので、もし各ベルトが傷んだとしても何処の縫製も解かずに交換・補修することを可能にしてあります。
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構造的にギボシ式にもドット式にも変更が可能なことから、現場で万が一開閉が出来なくなっても交換できるように、今回はサンプルで作ったスペアのベルトをお持ち帰り頂きました。こちらの革は普通の製品基準ですと問題ないものですが、stovl基準ではサンプル用にしか使わない素材なので緊急用ということで御渡ししています。

手前のシースが純正品です。個人的には好きな物ですが、やはりクオリティーとしては程ほどの官給品です。ボサボサが見えると思います。密度が低い腹まわりの部位だと思われます。この辺はメーカーのコストによったり運みたいなものですが、やはり耐久性は格段に低くなると思います。
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完成画像です。sample.2をベースに内側のスペーサー構造と硬度・厚みを改善し、外側のシルエットも修正していますので、ナイフとのフィッティングがさらに良くなりました。
そして、この2つを組み合わせますと。
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一つのフルサイズシースに。
ルックス的には普通のシースに近い物ですが、今回も幾つかの定説どおりではない構造の部分から製作してみました。
御要望と安全の両立。そして真似はしないマインドのもと製作を続けております。これは奇をてらう為ではなく、定番的なつくりの中にもホントにそれは正しいのかという部分も多くあると思います。そんな部分への取り組みというか別の角度から見ることがすきなんです。見過ごせないんです。
なのでお問い合わせいただければ、すべての箇所について何でそうなっているのか説明することが出来ます。意味のない部分はありません。
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現在もstovlではシースのオーダー製作を承っています。
ナイフはスタイル・大きさ・用途など多岐にわたりますので、基本的には現物をお預かりしてのフルオーダー製作になります。
大切な刃物や道具をお預かりするということはお客様にも私にとってもリスクですが、良い物が出来るかはナイフの形を見て検証してからでないと確証のある御見積もりを出すことはムズカシイものです。
先ずは画像で見せていただいて、各部寸法を元に検証して作れるか否かを判断させて頂ければと思います。

ブレードの大きさ・シースのスタイル・シースナイフ用・フォールディングナイフ用などでそれぞれ全然変わってまいります。
とくにシースナイフは、ブレードの大きさとヒルトの位置関係がとても重要になります。
この辺の説明はさらに込み入ったものになりますので、個別に電話等で説明させていただければと思います。


〇 フルオーダーシース御依頼時の目安です。都合により価格表示には幅がありますので御了承ください。
   まずはお持ちのシースナイフのブレード・刃の長さで考えください。
   
   10センチ未満の小型ナイフ 6000円~30000円位
   10~15センチ 8 000円~40000円位
   15センチ以上 10000円~

※.最低価格の部分は、【サンプル試作を行わないで製作した場合】の目安です。

※.価格は、革の相場変動・デザイン・構造が複雑化した場合や新規開発やワンオフ的な要素が大きくなれば高くなることもございます。
 また、シンプルな構造なものほど作るのが難しいこともあり、サンプル試作を行う必要がある場合も価格は変動します。(同一のサイズや構造の試作サンプルによる検証、構造確認用の部分的な試作等)

   
  「ブレードだけカバーするタイプ」~「フルサイズの抜け止め付き・stovl留め構造など」
   
   超小型のものや鉈や山刀等の大型刃物用も承ります。

ブレード部分だけカバーするタイプから、グリップ下まであるフルサイズシース。
大きさ・デザイン等。
何もつけないシンプルな物から、スナップドット・ギボシ・差込式・stovl留め等々のナイフ固定の構造・デザイン。
革二枚あわせ~間にスペーサーを挟んだ3枚~5枚・それ以上の合板構造。
各種芯材の有無。
腰吊下げ用のベルト通し、Dカン・フックなど吊り下げ金具・ナスカン等接続金具など。
素材に関しても色も含めヌメ革・サドルレザー・オイルレザー等々。
糸の素材と色の種類。

仕様やデザイン・素材など、選択する部分と実際にあわせるナイフにたいしてシースが出来るか否かによっても全て条件が変わってまいります。
参考見積価格の算出にわかりやすい表記方法も考えましたが、考えられる御注文の仕様とデザインが多岐にわたることから、現在検討中です。

先ずは、お電話かメールでお問い合わせいただいて、作りたいシースのイメージを教えて頂いたほうが大体の価格がお知らせできると思います。

くり返しになりますが、シースのフルオーダー製作を一律の基準の元に金額を数値化するのは本当に難しいことです。
お問い合わせいただきまして、各部の必要な数値と画像をお送りいただいてから最初の御見積もりをさせて頂きたいと思います。また実際に作ってみないと何とも言えない部分もありますので、完成してからのお見積もりになる場合もございます。

表示価格は、あくまでも目安であって、適合表どおりの見積もりになるとは限りません。工数・素材・デザイン・構造・技術難易度等々で変わってまいりますので、その時々状況ににより高くなることもございます。

フルオーダーですので安価とはいえない設定ですが、どんな小さな物シンプルな物でも
基本はサンプル試作もしくは構造検討して良い物が完成するよう取り組みます。


御愛用品の収め所をお探し場合は御検討ください。



Λ.今回の目安はとても曖昧なもので、ほんと申し訳ないです。
 
 このオンタリオナイフのシース製作はシンプルな物ですが、
 2ピースとする事で少し特殊な製作例になっていますので、同じような仕様を御希望の場合は個別にお問い合わせください。
 いろいろな条件が揃いませんと実現できないカタチでもあります。
 
 

◎ このシースの製作に携わらせていただいた事・参考の目安の作製についての御協力に感謝いたします。












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by stovlGS | 2014-01-26 05:17 | ナイフシース | Comments(0)
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