側面からの画像なので、外革面のコードバンと内装素材の生成りヌメ革との積層コントラストがわかると思います。 ヌメ革とコードバンでは硬度が違いますので、同じ素材のみで断面をそろえ組み合わせるよりも手間と技術を要します。 またこの個体はコードバンの厚みにあわせヌメ革(サドルレザー)を漉き加工により薄くしたのち組み合わせています。厚みを調整せずに組み合わせ製作することも可能ですが、パーツごとに細かく強度と質感を鑑みながら加工したほうが堅牢性を保ったままの全体に薄型のウォレットを作ることができます。 通常版と違い別途コスト負担が掛かりますが、コードバン外革とのコンビを希望される場合は強く推奨させてください。仕上がりが断然違ってきますので。 いつも書いてますけど、このコードバンの美しさは他にはない色と表情をもった革素材です。コードバンといってもよくある顔料塗りではなくて、染色で色が芯まで入っていますから深みと透明感が違います。 ところによって濃淡がありロットごとに表情は少しづつ違いますから、正確な色は表現しづらいのです。写真では使う機材・撮影技術・モニターによっても見え方が異なります。本当にいい色と質感だと自信をもって言える素材です。 最高品質のハイエンドレザーかつ堅牢な素材ではありますが、表面の美しさゆえデリケートな素材でもあります。自然な風合いを残しながら鞣された革ですし平滑なことから、使い始めの事はとくに小傷やスレなどが気になる方もいるかもしれません。 しかしながら小傷までもテイストにかえてしまうのがリアルレザーの魅力だと思います。 外観からわかる部分では、四隅の角部分のアールを丸みのあるものから比較的スクエアな形状に変更しています。完全な直角形状でも作れますが革が捲れたり壊れたりしやすくなりますし、ポケット内の袋布やバッグ内でほかの物への攻撃性も高まりますので少しだけ角は落としてあります。少しのことですが、財布自体の耐久性と納める物や服へのダメージが大きく違ってくる部分です。 そして標準型からの見た目の大きな変更は、ご覧のとおり外側のみコードバン素材に。 コードバンとヌメ革という良質素材同士の組み合わせは相性良好です。 異なる色や種類の違う素材どうしを組み合わせて作る場合には移染のリスクは必ずあります。 この組み合わせでの使用においては未だそのような報告はありませんが、念のため対策を施し使用上の注意点ご理解いただければコンビ素材でのオーダーも承れます。 内側はナチュラルカラーヌメ(生成りサドルレザー)です。 コインスペースはうちでは大定番の留め金具なしのフラップ仕様です。何回も書いてるんで細かく書きませんが本当に使いやすいですし不用意に開いてしまうことは絶対ありません。今では他でも見られるようになった構造ですが、たぶん最も古くから作り続けてます。ストーヴルと銘打つずっと前ですから90年代中頃からずっと作っている構造です。 ロングウォレット限定でいえばですが、フラップにはスナップやドットボタンが無いほうが絶対お勧めです。良い革で良質部位をフラップ可動部周辺に使わなければならないのですが、うちでは当たり前にやっていることなので..。ぜひ一度体験してみてください。 またファスナー仕様も得意にしてるんで、そちらもご相談ください。 カードスペースは基本型の個別のスペースが4ヶ所から6ヶ所に増設。 そして取り出し口のカーブのシルエットを大幅に変更して刳りが浅く連続性のある意匠に変更しています。 カードの厚みによりますが、一つのスペースに2~4枚は入りますし、その外側に幅広の大きなスペースもあることから収納性は良好です。 コンビカラーでの製作については、その製作工程の煩雑さと裁断時に不効率なことが幾つかあります。 先ず製作工程のことですが、そこは難しくとも私の技術的なところなので何処にも負けないよう取り組みます。 質感の相性がよければ難しい素材同士だとしても絶対良いものに仕上げます。 裁断に関しては、課題となる事柄と事情がうちには存在します。 どの製品を組み上げるうえでもいえることですが、それぞれのパーツによって適した革の部位があります。それは傷やスレといった表面的な要素だけのことではありません。繊維粒子の細かさ・革の流れと伸び方向・色焼け・色めの違い・血筋の走り方や方向・平滑さの違い・部位による柔らかさの差異等々、見極めなければならない項目は多岐にわたります。 牛一頭の段階で本質的な良質部位はそう多くはなく、それぞれのパーツごとに適した部位は限られています。それを一頭のなかで何を作れるか、個数ではなくて最良の状態組み合わせ何が作れるか考えて裁断しています。 それが異素材同士の組み合わせの場合には、一つの製品の中に二枚(二頭)の革を要し、お互いを組み合わせる為に最初に想定された裁断時のバランスを崩してしまうので、それぞれの素材でその後に作れる物が更に限定されてしまいます。 これらの理由からコンビ素材で製作をご希望の場合は別途コストを御負担頂くことがあります。その辺は個別にお問い合わせください。 前述の件ですが、革の適材適所を考えず効率と裁断都合を優先に作られている量産品やそれらを考えていない場合には関係ない事柄だと思います。 しかし、革となった命への敬意と嘘のない製作を優先させてもらって、本質的な良質部位だけで作ろうと決めています。 結果、製品寿命は延びますし気持ちよくお使い頂ける期間が長くなると信じています。 この個体はお客様からのオーダーで製作した物ですが、この仕様と同じものやこれをベースにお好みの変更を加えた物を作ることも可能です。 細かくイメージしづらいこともあると思います。そんなときはご連絡ください。 一緒にイメージをカタチにするご相談をいたしましょう。 うちのお客様は遠方の方が殆どです。距離は関係ありません。 〇 ロングウォレット サイズ 約195×95×12~25mm (容量と厚み指定により変動) 素材・仕様変更のない標準型の価格 ¥32500+tax ※今回の個体は各部仕様変更があります。 コードバン素材使用や ディテール変更・カード増設に関しましては、別途御見積もり致します。 Λ.短く書こうと思ったのにまた長い説明になっちゃいました。 本当は全然書き足りないのだけど、他のロングウォレットの記事とあわせて読んで頂いて補足されてください。御面倒お掛けします。 長財布はシンプルな直線基調のライン構成の物が多いですが、基本は紙幣を収納するものなので無駄を削ぎ落とすと必然的にそうなるのです。 直線箇所を狂いなく直線に作り上げることはとても難しいものです。 より直線に見せるために場所によっては微妙にカーブさせたりなんかして、派手に主張しない技巧も好きなんです。 結果的に、使いやすく使う方のお邪魔にならないようお供が出来て、かつ美しく。 そんな製品が作れるれるよう日々研究です。 .
by stovlGS
| 2015-01-09 17:31
| ロングウォレット
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