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ハンター装備 フルオーダー その4 ショットシェルホルダー試作/製作編

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ひきつづきまして、ハンター装備のもう二つのうちの一つ。弾差し。別名ショットシェルホルダーです。
※上の画像は端材で試作した各部検証用のサンプルです。
依頼主様が今までお使いだった物は、腰に巻く幅広のベルトに複数の弾が差せるようになっているベルト一体型の弾帯でした。
そのベルト一体型の弾帯から、今回は二つの独立した装備品【弾差し部分】と【ベルト部分】として仕上げていきます。

いつものごとく良いものを作るためには、先ずその対象物となる収納品の研究と実測からから始まります。
本来ならば、今回はその収納物となる散弾が必要なのですが、物がモノだけに実物を手に入れるわけにいかないという課題がありました。
そのかわり、参考資料として弾帯(御使用の物)と一緒に送って頂いた散弾のレプリカがあります。
それが画像に写っている黄色いほうの弾なのですが・・。
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これがむかし雑誌でよく紹介されていた散弾型のオイルライターでして、御愛用の弾差しに嵌まっている状態でもキツい感じで小さなクラックも散見されました。
そこで実弾の数値を調べて散弾型ライターの数値とを比べてみたところ、この黄色の弾は結構大きめであることが判明した次第。さて困りました。ファジーな作りでならば革の柔軟性に頼って作ることも出来ます。(実物の弾差しはそんな感じ)
でもこの黄色いレプリカ散弾の実測値が、実弾と比べ0コンマの違いではなく数mm単位で異なる数値を見てしまった後では、このショットシェル型ライターをベースに作ることはできません。もし作ったとしても数年~数十年後までしっかりと散弾を保持する事が出来るか心配です。
散弾は刃物以上に危険な物ですから、紛失や事故があっては絶対にいけません。

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更に調べていくうちに散弾にもサイズの他に用途や種類が幾つもあることを知りまして、
日本で使われている一般的な散弾のサイズや種類について理解を深めるべく、ファンシューティングの記事でお世話になった専門家の神崎さんに御相談したところ、
丁寧に解りやすく教えてくださっただけではなく、忙しい時間を割いて散弾をもってお越しくださいました!

銃器の所持免許がない当方の為に合法的に触れることが許されている模擬弾です。
火薬や雷管が組みこまれておらず中身は空なので危険性はありませんが、サイズは散弾の実物そのもの。

〇画像のグリーンの弾が模擬弾です。

ちなみに模擬弾とは装填や排莢など銃器を扱う練習時に使われるものだそうです。今回の模擬弾はスラッグ弾という散弾ではなく大きな一つの弾が先端に込められている物のようです。
こうして比べてみますと散弾型レプリカライターのほうは高さがあり直径もかなり太い事が確認できました。

おかげ様で、この模擬弾があることによって散弾の形状にそった革の安定化加工もしやすくなりますし、ホルダ―の使用感や安全性の検証作業を進めやすくなります。
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サンプル試作の段階では、弾差し部分のうえにカブセを設けて開き留めの固定を付けることも幾つかのカタチで検討しました。
想像ではありますが、もし獲物からの突進や反撃にあった場合、カブセがあることで散弾の装填が遅くなりハンターさん自身に危険が及ぶことはないだろうか、あるいは装填の遅れで撃ち逃しや打ち損じの原因にはならないだろうかとも考えました。
お客様に御相談したところ、以前から使っている弾帯にはカブセはなく、実際に現場で使う弾差しの多くは操作性を重視してかカブセがない物が多いと伺ったことから、今回はカブセ無しの三発差しで製作することになりました。
万が一にも抜け落ちてしまう事故や紛失等がおこらないように、革素材と散弾とのフィッテイングについては試作段階から最大限に注意を払い取り組みました。何しろ安全第一。
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カタチとしてはシンプルで定番といえるもの。今回は安全性が最優先される猟装具ですから元々あるカタチを参考に、素材の吟味・使用感やフィーリングの調整・堅牢度の向上に重点をおいて仕上げました。
何か今までの物と異なる部分があるとすれば、三連装だということでしょう。
よくあるシェルホルダーは5~10連装が多いようですが、お客様との御相談で今回は必中の三発仕様。
他に多弾数装備のものも併用されるとのことでしたので、そちらには散弾こちらにはスラッグ弾みたいな使い分けも出来るのかもしれません。
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サイドから。こちらもシンプルに基本に忠実に。
今回は同時に専用のベルトも製作していますから、そのベルトの厚みと幅に合わせベルト通し箇所と装着位置の高さ調整等も鑑みて各部寸法を調整しています。
縫製箇所についても注意しなければならないポイントがあります。上部の白いステッチの奥、とくにここは縫い糸とベルトとが常に触れ合うところですから、糸切れ防止対策を施さなければなりません。
縫製ラインを溝状に凹ませるか溝堀りをして糸が革表面より沈みこむようにして縫い締めます。その上でパラフィンを擦りこんで糸を更にガード。こうしておけば長期使用においても糸切れを防ぐことができますし、その道具を安心して使うことが出来るでしょう。
このへんの対策が不十分であっては、散弾がおさまる部分をいくらしっかり作ったとしても、ベルト保持に関するところが傷んでしまっては安全とは言えませんからね。念には念をそれがストーヴルのやり方です。
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三連装ショットシェルホルダ―完成です。ルックス的にはミニマムであること以外では定番のカタチですね。
でも市販されている物より数段シッカリしていると思います。そうでなければ注文製作の意味はありません。
この素材になってくれた革にも、これからこのショットシェルホルダーを使うとき対峙する命へも申し訳がたつように。
いい加減な物は作れません。
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抜き差しの感じをお伝えしますと、クリアランスゼロで散弾と弾差しが嵌まっております。シェルの円周面と革の内壁がピッタリと吸い付くようにフィットしているので不用意に抜けてしまう心配は全く無さそうです。逆に抜きとるときには真空気味になって良い感じの抵抗感を従いスポっていう感じで扱えます。
逆に嵌め込むときには空気の圧力と摩擦を感じながらキツすぎることもなくスッとおさめることが出来ました。
散弾の下側部分を形作っている縫製されていない切り替え部分、ここが弁の役割を果たしています。

今回のショットシェルホルダー(弾差し)は製作者自らが実際に使用して試すことができない物ですから、
依頼主様と相談しながら安全性を最優先で作ってみました。


続いては御注文のハンター装備最後の一つ、ウエストベルトについてお送りします。






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by stovlGS | 2017-10-28 17:15 | ナイフシース | Comments(0)
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