学びとして 他社製品の修理 /考察 

a0155648_16121263.jpg

こんばんは、ストーヴル佐藤です。
本日は革製品の破損/修理についての考察。

※ 修理といいましても、当stovl工房製ではなくて【他所様の製品】の修理です。
お問い合わせ欄や以前の投稿にも記していますが、基本的には他社製品の修理や改造を承っておりません。

〇今回の案件は、常々お世話になっている方とのお話の中からでてきたことで、私の学びの一環ということでやらせて頂きました。

修理依頼箇所はショルダーストラップとバッグの接続部分で、ベルトの革が完全に切れて、両端の糸二本だけでバッグ本体とかろうじて繋がっている状態。
破損箇所を補修するのにも必要な余白はなく構造的な限界もみられます。コスト的な御負担の課題もありまして、簡易的な補修をということで承りました。
簡易的といいましても、いい加減というわけではなく、そのような条件の中での最善ということです。


今回の修理品は、印伝製品では有名なメーカーのもので、大変気にいってらっしゃっる。それゆえにどう心に納めて良いものかとお悩みの御様子でした。
この気持ち、私とても解ります。だから自分は作り手になったというのもあります。

お話によると使用頻度は多くないとのことで、各部確認したところ使い方も悪くないようでした。
気に入っているので、いつも見えるところに掛けておいたとのこと。といっても紫外線に常にさらされている環境ではなく、仕舞いこんでいるよりも革にとって悪い条件とはいえないと思えました。
ベルト部分は風化のような感じで表面の顔料が剥がれ気味で自然劣化が見受けられたことから、原因は構造/意匠だけでなく、革の脆さにもあったようです。全体に粘りが少ない革で薄いところにも問題があると感じました。
婦人用の革製品の場合、軽量な物が好まれることもあって、その革の耐久性の限界をこえた厚み調整がされている物が多いのです。


実は今回が二回目の破損だそうで、以前にも同じように壊れてしまったことがあったそうです。
それはショックですよねぇ。
その時にはメーカーのほうで良心的な対応をしてもらったとのこと。
しかしながら再び同じ壊れ方、また製造メーカ―に修理に出して、同じような直し方をしても早期に壊れてしまうことは目に見えています。


革が切れてしまうのは針目のピッチが小さすぎて、切り取り線のように作用しているからです。
それにくわえベルト幅が細すぎることで、壊れづらいピッチの針目にすることは難しく、さらにミシンで叩くように縫えば、わざわざ切り傷を付けているようなものです。
根本的に解決するには革質を異なるものに置き換えて、ベルト幅を広くすれば少しの改善はできるでしょうが、バッグ側の取り付け幅が変更できない構造では限界があり、同じつくりを踏襲した修理をしても結果は同じことです。

バッグ本体とダイレクトに接続してあることで、ベルトの付け根の動きに自由度が無いことで局所的に相当な負担が掛かり続けているのも大きな原因ですから、限られた制約の中で構造変更を施すしか方法はありません。

a0155648_16115711.jpg
今回は先ほど書いたとおり出来る範囲でベストでシンプルな補修になるよう、コストの御負担が少なくなるよう仕上げました。
出来上がってみれば至ってシンプルで最小限の補修。
(資料用の記録画像なので、解りづらい画ですみません)

傷みの原因になっていたベルトと本体の接続方法を改めました。
お好みの色のDカンを用意して、それを抑え固定する革パーツを作りバッグ本体に固定。
これならば取り付け幅が変えられなくても、バッグとベルトの両方に過度の負担が掛かりづらくなります。

印伝の施された革自体も厚い物ではなかったので、引き裂き強度を鑑みて少し針目のピッチを大きくとり、バッグの縁の積層部を挟みこむように手縫い固定しました。
手縫いの良さは耐久性があることと針目の立体感や美しさにあるのですが、今回はそのような制約があったことでむずかしい部分もあったことをお知らせしておきます。

ベルトのほうは元々の物を活かして傷んでいる個所は取り除き、取り外し可能な接続金具を縫い付け固定しました。
これで、ベルトの劣化や傷みが更に進んでも、そちらだけを簡単に交換することが出来ます。



Λ.他社製品の修理を受け付けていないのは、市販されている多くの革製品が修理可能な構造になっていないということが一番の理由です。
付け焼刃的な修理であれば出来るものは多いと思います。でも、そのまま元の通りに直したとしても、元々の設計/構造/製法/素材選択が良くなければ、再度同じところが同じように壊れるのは明白です。

実際今まで見てきた革製品の壊れることの最もたる原因は使われ方というより、構造上に元々そうなる要素を持っていたということが多いと感じています。

革製品は長持ちするとか一生モノといったイメージを多くの方がお持ちだとと思いますが、革自体がいくら強くても、構造・製法が良くなければ長く使えるものにはなりません。


今回のバッグ/メーカーは、ストーヴルとは考え方も製法も素材もすべて異なるものでしたが、ある意味雰囲気のある物で世間的にみれば好まれている種の物なのだと思います。
修理記事なので、どうしてもネガなところを記してしまいますが、勿論良点もあることを表しておきます。

どんな製品にも欠点はあり、ストーヴルにおいても完全なものではありません。
でも少しでも良いものになれるように、R&Dは必要だと考えています。





.

[PR]
by stovlGS | 2018-01-31 20:08 | Comments(0)
<< ハーフウォレット コードバンブ... ハーフウォレット 後染めブラ... >>