1 ![]() 使用する革素材のお話です。 ユーザーさんに向けてという以上に、自分自身が納得し製作する為にも必要な考察。 現在、市場にあるモーターサイクル用革製品。 とくにサドルバッグなどバイクに装着するバッグ類の素材には、 合皮や本革が多く使われています。 合皮の場合には、気軽に使える事や価格が安くでき生産性が良い事など、利点も多くあります。 でも、質感・堅牢性・を考えますと、リアルレザーに行き着くと思うのです。 stovlが作る場合でも、やはり基本は「本革」です。 しかし、革素材には、一つ大きな課題が存在します。 ここでいう防水とは、鞄の内側への漏水の意味ではなく、革素材自体への滲みこみの意味です。 でも、実際には世間で思われているほど、革は雨に弱いわけではありません。シミやキズ・型崩れなど、人それぞれ革に対する要求と嗜好によっても、弱さと傷みの概念も変わってまいります。 どの症例というか事態においても重要なのは、濡れた後のメンテナンスが大切という事です。濡らさないに越した事はありませんが、乾燥後の油分補充をしっかり行えば、逆に良いエイジングになる事もあります。 しかし、stovlとして製品として、実際にGS用を作る場合、やはりこの「雨対策」が大きな課題となります。 ずっと以前、自分のGS用としてバッグを作った時には、あまり気にせず雨天でも問題なく使用していました。 ファラオラリー用として製作した時には、2008・2009年と砂漠での開催という事もあり、雨の問題はなく無事終了。 その後、製品版としてGSバッグを製作する為、本気で調査研究をはじめました。 とくに日本の場合、雨天走行は避けられない気候です。 そんな環境に適したモーターサイクルバッグ用の革素材として、基準となるような指針が自分の中にあれば、より自信をもって、それに則した製作が出来ると思うのです。 ハーレーなどアメリカンバイク乗りの人達は、レザーバッグを雨でも気にせず使っています。それ以外のバイク乗りの方達は、ウエア以外に本革製品をバイクに使うという習慣はあまりないようです。 BMWにおいても、2バルヴの頃から純正品としてリアルレザー製のサイドバッグ・GS用にはリアバッグが存在していました。 私stovlサトー、それらも含め欧米で昔からラリーやエンデューロレース・日常や旅などのバイクシーン全般のなかで使われてきた革素材の製品郡に影響を受けてきました。 なので、作り手としてなるべく正確な説明ができて自分も納得できるように、革製品を日本で使う上での基準となる何かをみつけたいのです。 長くなりそうなので、今回はおもにGS用として感じた事を書かせて頂きます。 モーターサイクル用、とくにオフロードやGS系の為に適したレザーを探し歩くこと数年。 その間に巡り合った革素材やバッグを見るにつけ、雨に強い事を謳っている製品や革自体にも、脆弱性を感じる日々でした。 雨が嫌なら金属や樹脂ケースがあります。ではレザーバッグを選ぶ(作る)意味って。 それといつも気になるコトバ。 「一生モノ」 残念ですが、そう呼べる革製品など殆ど存在しません。作り手や売り手側から無責任に何の躊躇もなく使われる言葉です。 自分の作る物も、一生モノではありません。でも、世に出た革製品のなかで最も堅牢だと思えるよう取り組んでいきたいですし、 欠点や対処法も説明できて、初めて「製品」といいたいのです。 製作がstovlの本業ではありますが、 販売したメーカーや工場に修理を断られた革製品のお問い合わせや御相談を頂くことがあります。 革製品全般にいえますが、やはりアメリカの物にはワイルドな、ヨーロッパの物には各お国柄を感じられる作りや工夫がされています。 ここでは興味深く感じたGS用リアバッグの修理と、それら作り手の取り組みと発想の一例を。 その存在にリスペクトもしている製品です。 どちらの製品も、ただ作るだけでなく、雨への対策にも努めている事が確認できました。 しかし、それは、「諸刃の剣」 である事もわかり驚いています。 私が感じた事です。参考程度にご覧ください。 ![]() 上の写真は修理時に譲って頂いた革片。 私にとっては、より堅牢な製品を作る上で、とても大切な研究資料の一つになりました。 純正バッグ修理と改良こちらもあわせて参照頂けるとありがたいです。 今まで幾つかの純正バッグを修理したり触る機会がありました。すべての純正品にあてはまるかは解りませんが、見てきた個体はどれも同じような傷み方をしていた印象があります。 革の表面とともに、カブセフラップの可動部とベルトの曲がる箇所が、裂けてきたり表面がささくれ立つように割れている状態です。絶版になって久しいので、どの個体も長い時間が経過している物ばかりですから、致し方ないともいえると思います。 しかし、その革の傷み方を見て感じるのは、作る工程と使い勝手の両方を考えて行なった漉き掘りの処置の仕方が少なからず影響しているという事。 堅い革を使って箱状に作りあげたり、直角に曲げて構造物を作る時、カタチを整え曲げやすくする為に構造線に沿って裏面に漉き掘りを入れる製作手法です。しかし、それが革の組成密度や厚み・硬さに対して適切な深かさではなかった場合、逆に壊れやすい原因にもなってしまいす。 とくに開閉の際、負担の掛かるカブセやフラップ等の曲がる可動部分においては、とても重要なポイントとなります。 この革の表面には、雨対策のコーティングもしくは薄い箔をしてシボ模様が型押しされているようです。 新しい頃はそれなりに雨をはじきますが、縫い目やコバ(断面)に防水コートはされていませんから結局は革断面内部まで浸水はさけられません。 その結果、革内部の水分蒸発をコーティング自体がさまたげ、生乾きの状態が長く続くことにより、革にとって最も好ましくない状況になっているのではないか。 乾燥後に油分を補充しようにも表面コートのせいで、革にとって最も重要なオイルメンテナンスを出来ないことが傷みの原因になっていないか。 そんな湿潤と乾燥の繰り返しのなかで、裏側に掘った深い漉き掘りと相まって、表も裏面も革が崩壊しやすくなったのではないかと推測しました。 ![]() こちらの製品、数人の2vGS仲間から相談を受けまして、同じメーカー製と思われる新品と使用済みの二つの個体を前に、以前から聞いていた症状の真相を確認する事が出来ました。 このリプロ品、BMW純正品とカタチ・構造・サイズがほとんど同じです。 しかし、実物のその剥離っぷりは、私の予想を遥かに超えた状態でした。 ![]() 0.5ミリ厚位のゴムのような合皮のような伸縮素材が強力に貼りこんでありました。細かなシボ模様もあるので、本革と思っている人も多いと思います。 ![]() こちらの場合でも、縫い目とコバ面から染込んだ雨が表面の防水膜により乾く事が出来ずに日光熱などが加わった事が、剥離の原因だと感じました。 こちらの製品は使用期間も短いようで、革の傷みは殆どありません。 防水膜を剥がして分かった事は、コストの為か別の要因か、革への接着力を強くする為に吟面層のない床革のようなザラザラな革をボディ全部に使用していた事です。 実際強度的に充たされているのかもしれませんが、どうなのでしょう。自分としては、不安と感心の両方の感慨が・・。 通常、革はオモテ面の吟面層があることで更なる強度が確保されています。 スエードの場合でさえ、裏返して裏面側に吟面を置換える事で、強度への担保がされているのです。 私が今までGS用も含めモーターサイクル用レザーバッグを作ったり見てきた中で、この二つのバッグは、とくに印象に残る物です。 ほぼ単一車種に特化している製品とはいえ、幾つもの使いやすさと作り易さ両面への取り組みがされている事も感じさせてもらえました。 それと同時に、その対策が長期の使用や措かれた環境により破損要因にもなる事の矛盾点も。 そして、そこから見えてくるモーターサイクルレザー製品の更なる改善点と、 以前から考えてきた革素材と構造の関係性・製作の方向性についても再確認する事が出来ました。 ここ数年来、多くの皮革関係の方達に協力と助言を頂き、たくさんの革を見て触って検討を続けてきました。しかし、この革と雨との関係性は、どの専門家をしても明確な答えを持っていない事もわかりました。 私も答えにたどり着いたわけではありません。 革の防水撥水のことを考えますと、 表面のコーティングのせいで革と呼ぶには雰囲気や上質感が伴っていないものがほとんどです。 防水と謳っている革でも、ゴムやビニールコーティングをしない限りは数分間しか染込みを防げず、またコーティングが経年変化で剥がれたり割れる事もわかりました。 多くの防水革や雨に強いと言われている革も見て触って、実際に水をのせる等して撥水性の確認しましたが、 [耐水性の良い革]と[表情があり良質と思える革]が自分の中では全く一致しない事もハッキリしました。 そして思うのは、「革は皮らしく、上質な物を使い、作りづらくても手間をおしまず、正直に作る」といった当たり前のことでした。 なので、巡り巡って結局は、馴染みのあるタンニンなめしの革を使う事になります。 この革達に巡り会うのにも多くの時間が掛かりました。 タンニンといいましても、サドルレザー・オイルレザー.ヌメといろいろございます。 そして厚みと硬さ・しなやかさのある革素材を適材と思える用途と製品に使ってまいります。 これでやっと、今までネガと思えるところを対策したモーターサイクル用リアバッグ、新たに製作することが出来るようになりました。 そして防水への対策ですが。 stovlでは、防水はレインカバーで対応します。 昔から革は野外活動や軍用・登山用などで使われてきました。 それらは殆どがタンニンなめしを主体とした堅牢なヌメ革で作られていました。 そして、どれもがカッコ良いですし、完全な防水処理なんてされていません。 使用後、油分補給などのお手入れをして頂ければ、少し濡れた位では問題ないと考えます。 革のホントの表情と良さを味わってください。 もし傷んだら、僕が直します。 だって修理も出来るよう考えた製法と構造にしてあるのですから。 Λ.一番上の画像ですが、牛の半身、半裁です。 stovl製のリアバッグですが、長期の使用を考え良質な部分だけを使用します。 実質、牛一枚から一つのバッグしか作れません。 その辺の説明はまた次の機会に。 . ■
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by stovlgs
| 2012-07-13 18:30
| R100GS専用リアバッグ
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![]() いつもは表側の吟面を使用しています。 通常版でも十分キレイなホースハイドですが、今回は裏(床面)が更に美しく仕上げられているスエード仕様。 もちろん吟面を使っての製作でも素晴らしい質感のレザーですが、今回は贅沢にスウェード面を使用して、 雨でも雪でもかかって来い。そんな用途に使われる予定。 なんと洗えるウォッシャブルレザーなのです。 バイクのシートに張り込んだら、どんな質感になるのでしょう。もち立体裁断で。 . ■
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by stovlgs
| 2012-07-09 13:19
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![]() そして、いきなりの完成画像。 依頼主様に途中の製作経過画像を見ていただいたところ、ブラック×赤ステッチ版の追加オーダーの御依頼もいただきました。 今回のレクサス用では、当初予定していたデザインとディテールから幾つかの変更点がありました。 実物のキーを前に検討・作業をしないと、画像からだけでは判断出来ない部分もあります。 その都度、依頼主様と御相談了承の上進めてまいります。 施錠開錠スイッチまわりの構造とバランス的な理由と、穴まわりの革の強度が充たされている事から、補強のステッチは入れておりません。 つづきです。 ■
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by stovlGS
| 2012-07-04 04:37
| スマートキーケース
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